― 内包された憧憬 について ―

備前焼に使用される陶土(田土)は、およそ150万年という悠久の時を経て齎されると言われています。

その土を地中から掘り起こし、器を形造ることの出来る可塑性を持つ備前の土としての弱点である割れ・切れ・歪みなどの対策として、10日以上の時間をかけてゆっくりと温度を上げてゆき、最終的に1200度前後の高温で “焼き締める” という焼成方法を見い出し、独特の “ねっとりと粘り強く柔らかい肌合い”を具現化する、唯一で無二の陶器に昇華させた先人達の慧眼と研鑽に心からの謝意を捧げます。

 それ故か?備前の土は、一度焼き〆れば破片となってなお、力強く暖かいエネルギーを発し続けています。

 ー 内包された憧憬 ― は、亡き祖父と父、二人の背を見つめてきた私の三人が、造り・伝え・焼き続けて来た在り様の中で生まれた膨大な量の破片の中から生まれた二人へのオマージュ作品です。奇を衒う事なく、唯、破片の中に潜む祖父や父の微笑みや想いを表したい。そんな気持ちでこの容を求め、作陶40年、還暦を過ぎた今を顕したかったのです。